時計界の「常緑樹」として知られるラグジュアリースポーツウォッチは、1970 年代に誕生したスタイルで、ケースとブレスレットが一体成型されたデザインが特徴で、スポーティさとカジュアルさを両立させている。半世紀の時を経てもこのデザインは人気を維持しており、特にここ 5 年では再びラグジュアリースポーツウォッチの復興ブームが巻き起こっている。2025 年に各ブランドが発表した注目新品を、順不同でご紹介する。
パテック・フィリップ キュービタス Ref.7128
2025 年にパテック・フィリップがキュービタスシリーズに追加したのが Ref.7128 だ。ケースサイズは初回モデルの 45mm から 40mm に縮小され、より精巧な印象になった。新作は 18K ローズゴールドとホワイトゴールドの 2 種類の素材から選ぶことができる。
1999 年以来約 20 年ぶりに誕生したパテック・フィリップの新たなラインナップであるキュービタスシリーズは、同社のスポーツウォッチがこれまで持っていた丸みを帯びたデザインを打ち破り、角張った八角形のケース(正方形に近い形状)が大きな話題を集めた。裏蓋はスケルトンデザインで、内部に搭載されたパテック・フィリップ 26-330 S C/434 型自動巻きムーブメントを一望できる。
IWC インターナショナル・ウォッチ・カンパニー エンジニア 35mm
キュービタスシリーズと同様に、IWC はエンジニアシリーズに直径 35mm の小サイズモデルを追加した。しかしこの新作は単なる「等倍縮小」ではなく、既存のデザインを継承しつつ部分的な改良が施されている。例えば 3 段構造のブレスレットの中央リンクにポリッシュ加工を施したり、裏蓋をスケルトンデザインに変更したりと、細部にこだわりが見られる。
35mm のケースに対応するため、同モデルには全新開発の 47110 型ムーブメントが搭載されている。ムーブメントのブリッジには広範囲にジュネーブ波纹が施され、自動巻きローターは金色で仕上げられ、一部にはブルースチール製のネジが採用されている。仕様面では、ムーブメントの直径が 25.6mm、ジュエル数が 23 石、振動数が 28,800VPH、理論上のパワーリザーブが 42 時間となっている。
ロレックス プレシジョン
今年ロレックスが発表した全新ラグジュアリースポーツウォッチが、プレシジョンだ。これはロレックスが約半世紀ぶりにラグジュアリースポーツウォッチの領域に復帰した作品である。デザインは 1970 年代の「オイスタークォーツ」からインスピレーションを受けつつも、現代の審美観に合わせた新たな要素が多く取り入れられている。40mm のケースに、同社の象徴である貴金属製の三角溝付きベゼルが組み合わされている。一部のモデルにはハニカムダイヤルが採用されており、レーザーカットで凹んだハニカム模様にスジ加工が施されることで、細部の質感が豊かになっている。
このモデルのもう一つの大きな特徴はムーブメントにある。スケルトン裏蓋からは、ロレックス 7135 型自動巻きムーブメントの精密な構造を観察することができる。このムーブメントの振動数は 36,000 回 / 時間(5Hz)に達し、時間の分割がより細かくなっている。さらにムーブメントには「ダイナミックインパルス」という脱進機構が採用されており、シリコン製のダブルエスケープホイールとエスケープレバーで構成されている。
ショパール アルピーノ 41 SL ケイデンス 8HF
ショパールのマウンテン フライヤーシリーズが今年発表した新品は、マウンテン フライヤー 41 SL ケイデンス 8HF だ。これは振動数が驚異的な 57,600 回 / 時間(8Hz)に達する腕時計で、直径 41mm のセラミックコーティングチタンケースが採用されている。名称の「SL」は「スーパーライト(超軽量)」を意味し、ベゼルやケースクラウン、さらにベゼルを固定する 8 本のネジまでもがセラミックコーティングチタンで製造されることで、時計の総重量が驚異的な 75g に抑えられている。
ダイヤルは「ベルニナロックグレー」の配色が採用されており、放射状のスジ加工が施されたダイヤルはまるで「鷹の目の虹彩」のように見える。これはシリーズのデザインの原点となっている。内部に搭載されたショパール 01.14-C 型自動巻きムーブメントにもセラミックコーティングチタンが活用されており、ブリッジなどの一部の部品がこの素材で製造されている。超高振動数(57,600 回 / 時間)を実現しつつも、約 60 時間のパワーリザーブを確保している。この卓越した性能から、本作は今年のジュネーブ高級時計賞(GPHG)で「ベストスポーツウォッチ」賞を受賞した。
GP ジル・ペルジェ ラ・コロナ 50 周年記念モデル
2025 年は GP ジル・ペルジェのラ・コロナシリーズ誕生 50 周年(1975 年発売)にあたり、ブランドはこれを記念した限定モデルを発表した。39mm の精巧なケースに、パリゲージュ模様が施されたグレーのサンブラストダイヤルが組み合わされており、復古的でエレガントな雰囲気を醸し出している。象徴的な八角形のベゼルは 3N ゴールドで製造され、ゴールド製のケースクラウンとゴールドとスチールのコンビネーションブレスレットと相まって、高級感が溢れている。
注目すべき点は、この 50 周年記念モデルには全新開発の GP 4800 型ムーブメントが初搭載されたことだ。このムーブメントの直径は 25.6mm、厚さは 4.28mm で、ノーコレクターバランスホイールを採用し、振動数は 28,800 回 / 時間(4Hz)、パワーリザーブは 55 時間となっている。今後、長年使用されてきた GP3000 型ムーブメントに取って代わる可能性が高い。
以上が 2025 年に発表された注目のラグジュアリースポーツウォッチの数々で、それぞれに鮮明な特徴がある。これらの新作からは、ケースサイズの縮小が今年の流行りのトレンドであることが読み取れる。また貴金属素材の導入により、スポーティなスタイルにも一層の高級感が加わっている。