チューダー「レンジャー」36mm新登場:エクスプローラーIに肉薄する理想の小径ビッグサークロス

アドベンチャーウォッチの代名詞ともいえるTUDOR(チューダー)「レンジャー(Ranger)」。そのデザインフィロソフィーは、創業者であるハンス・ヴィルスドルフが手がけたロレックス「エクスプローラーI」と多くの共通点を有しています。
どちらも過酷な環境下でも視認性を確保するため、3・6・9・12時位置に太字のアラビア数字を配置。針先にはたっぷりとルミノヴァが塗布され、シンプルな大三針ながら堅牢さを内包しています。
レンジャーは2022年のモデルチェンジを経て、これまで39mm以上のサイズで展開されてきました。しかし、近年のメンズウォッチ界隈では「小径回帰」の波が到来。多くのコレクターが「レンジャーにも36mmがほしい」と声を上げ続けていましたが、その願いがついに叶えられたのです。
2025年に登場した新型レンジャーは、36mmという絶妙なケース径に加え、新たに「砂丘白(サウンドホワイト)」と名付けられた文字盤を纏い、シリーズに新たな彩りをもたらしています。
歴史に学び、現代に蘇る36mmの黄金比
「レンジャー」という名称自体は、ブランド創設者のハンス・ヴィルスドルフが1929年に商標登録した歴史あるもの。ただし、当時は特定のモデル名ではなく、「探検」や「冒険」といった属性を表す形容詞として使われていたに過ぎません。
レンジャーの歴史的なルーツは、1965年に発売されたRef.7995に求められます。これが文字盤に「RANGER」の文字を初めて配したモデルとされ、シリーズの始祖とされています。
当時のRef.7995はわずか34mmという小径ケース。太めの矢印針とアラビア数字が特徴で、現代のレンジャーのDNAはここにしっかりと刻まれています。
それから半世紀以上を経た2014年、現代版レンジャー(Ref.79910)が復活。2022年に発表された2代目(Ref.79950)では、ケースサイズは39mmに収まり、文字盤から「SELF-WINDING」の表記が消えて「RANGER」の文字が復活するなど、近代的な解釈が施されました。
そして今回登場した36mmモデルは、シリーズの「3代目」という位置づけではなく、2022年の39mmモデルを「等倍縮小」したような存在です。
デザインはほぼそのままに、より繊細なサイズ感を実現。ケース厚は11mmと、以前のモデルよりも薄く、しなやかな装着感を約束します。
⚙️ 搭載ムーブメントの変更点
両者の大きな違いは、搭載されるムーブメント(機芯)です。
39mmモデル:MT5402型(直径26mm)
36mmモデル:MT5400型(直径30.3mm)
通常、ケースを小さくする際にはムーブメントも小型化されるのが一般的ですが、36mmレンジャーはむしろサイズの大きなMT5400を搭載しています。ケース内に大きなムーブメントを無理なく収めるため、内部構造は非常にタイトな設計になっています。
このMT5400は、シルバー遊丝と無卡度微調整(砝碼摆輪)を備え、70時間のパワーリザーブを発揮。COSC(コンス)によるスイス公式クロノメーター認定を取得しているため、信頼性は折り紙つきです。
🎨 新色「砂丘白」が放つ、復古の趣
それまでレンジャーといえば、光の反射を抑えるマットブラック一択。これはアウトドアという属性上、視認性を最優先した必然の選択でした。
しかし、今回の新作ではシリーズ初となるライトカラーが登場します。それが「Dune White(砂丘白)」です。
これは単なる白ではなく、ほんのり黄みがかった米色(ベージュ)の文字盤。銀白色のような冷たさを感じさせず、ヴィンテージウォッチのような温かみと復古的な雰囲気を漂わせています。
この「砂丘白」は36mmモデルだけの独占色ではなく、39mmモデルにも拡大導入されています。これにより、性別や手首の太さ、ファッションのテイストを問わず、自分にフィットする「レンジャー」を選択できるようになりました。
💰 ラインナップと価格帯
現在、TUDOR公式サイトでは36mmと39mmの両サイズが販売中です。価格帯は日本円で換算すると約25万円~28万円前後(参考:中国市場公価は36mmが約25,200~27,800元)。
表格
特徴 36mmモデル 39mmモデル
ケース径 36mm (薄さ11mm) 39mm (薄さ12mm)
搭載機芯 MT5400 (直径30.3mm) MT5402 (直径26mm)
ストラップ ステンレススチールブレス / 織物ストラップ ステンレススチールブレス / 織物ストラップ
文字盤色 黒色 / 砂丘白 黒色 / 砂丘白
まとめ
TUDOR レンジャー 36mmは、単なる「小さいレンジャー」ではありません。歴代のDNAを忠実に再現しつつ、現代の装着感を追求した完成形です。
特に「砂丘白」の登場は、これまでの過酷なフィールドだけの工具ではなく、都会のビジネスシーンやカジュアルスタイルにも溶け込む「オールマイティウォッチ」としての新たな一面を見せつけてくれます。
ロレックス・エクスプローラーIと並ぶ、新たなスタンダードとなる可能性を秘めた一台と言えるでしょう。